無痛分娩とは
無痛分娩とは、一言でいえば出産の痛みを和らげる方法です。無痛分娩には「硬膜外麻酔(こうまくがいますい)」という麻酔が使われます。これは脊髄の近くにある硬膜外腔というところに麻酔薬を少量ずつ注入します。 無痛分娩を開始すると徐々に痛みは和らぎますが、痛みの感じ方は妊婦様個々人によって異なります。痛みや違和感が完全に消滅するわけではなく、人によっては軽度な生理痛程度と感じたり、ある程度の痛みを感じたりする方もいます。麻酔による赤ちゃんへの影響はほぼありませんのでご安心ください。
無痛分娩と普通分娩の違い
普通分娩は陣痛に合わせて、自分の力でいきんで赤ちゃんを腟から産みます。
無痛分娩とは、麻酔を用いることによって陣痛を緩和しながら分娩に至ることです。
日本での無痛分娩ニーズの高まり
無痛分娩への正しい理解と受け皿の拡充が必要
日本は9%、アメリカは70%以上の普及率
厚労省の2020年発表による調査データによると、日本における無痛分娩率は8.9%であるのに対して、フィンランドは約90%、フランスは約80%、アメリカは約70%に上っています。海外に比べると日本での普及率はまだ低い状態ですが、日本でも2016年の無痛分娩率が6.1%であったことを見ると少しずつ無痛分娩の認知や需要が高まっています。
無痛分娩ができる病院が限られている現状
2017年の日本産婦人科医会「分娩に関する調査」によると、無痛分娩に対応している病院は分娩を取り扱っている病院件数のうち、30%程度にとどまっています。分娩管理に加え、無痛分娩による麻酔管理を行うことになるため、病院側の受け皿が整わなければ難しいでしょう。日本の妊婦様のニーズにこたえるためには、無痛分娩や麻酔に熟知した専門職の増加と機器設備の充足が必要です。
ファミール産院グループは
無痛分娩対応医院です
当産院では無痛分娩に対応しています。妊婦様の安全性を第一に考え勉強会や院内体制を整え、日々安全性の向上に努めています。
無痛分娩のメリット
一番のメリットはお産の際の痛みの軽減ですが、それ以外にもメリットはいくつかあります。
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陣痛の強い痛みを和らげることができる
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他の鎮痛法より効果が期待でき、胎児への影響がほぼない
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外陰部や腟の縫合時に痛みがない
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緊急帝王切開になったとき、速やかに手術に取りかかれる
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分娩後の回復が早い傾向にある
無痛分娩のデメリット
デメリットはいくつかありますが、対処可能な場合があります。
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分娩時間が長時間になることがある(促進剤を使用したり、吸引や鉗子分娩で対処します)
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発熱・頭痛・感染症・血圧低下のリスクがある
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麻酔の効果が弱い場合がある(体位の変更や麻酔の追加などで対処しますが、痛みの感じ方には個人差があります)
麻酔方法について
硬膜外麻酔(こうまくがいますい)
母子ともに安全性が高い麻酔方法
硬膜外麻酔は脊椎(せきつい)の中にある硬膜外腔(こうまくがいくう)に硬膜外カテーテルと呼ばれる細いチューブを入れ、そこから局所麻酔薬を入れて痛みを和らげる麻酔方法です。 硬膜外麻酔の特徴として、痛みを伝える知覚神経は麻痺させるのですが、運動神経は麻痺しないためにいきむことが可能になることです。 カテーテル挿入時にはに痛み止めの注射をしますので、痛みを感じることもほとんどありません。
無痛分娩の安全性について
適切な麻酔処理が重要です
医療従事者の知識とスキル、最適な人員配置と医療機器などの医療体制を万全に整えること
日本は極めて高い医療水準にありますが非常に残念なことに、出産時の妊婦様の死亡事故は日本全体の中でゼロではありません。厚生労働省の調査によると、2010年~2016年の期間に無痛分娩を行った妊産婦死亡14例のうち、麻酔が原因であったもの(局所麻酔中毒)は1例認められました。
重大な事故の原因となることとして「麻酔のカテーテルが誤った場所にはいること」が挙げられます。
重大な事故を未然に防ぐためには医療従事者の知識とスキル、最適な人員配置と医療機器などの医療体制を万全に整えることがとても大切なのです。
無痛分娩の流れ
無痛分娩は、産科医や麻酔科医が提供する麻酔を使用して、出産時の痛みを最小限に抑える方法です。
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# 01
ご相談
妊婦様が無痛分娩を希望する場合、通常は出産前の定期健診や出産前の訪問で医師と相談します。 医師は妊娠の状態や妊婦様の健康状態を評価し、無痛分娩が適切かどうかを判断します。
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# 02
麻酔の説明
医師や麻酔科医が、無痛分娩に使用される麻酔の種類や効果、リスクなどを詳しく説明します。 これには硬膜外麻酔や脊髄麻酔などが含まれます。
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# 03
麻酔の投与
無痛分娩の麻酔は通常、陣痛の進行や妊娠の段階に応じて投与されます。 最も一般的な方法は、硬膜外麻酔や脊髄麻酔を使用することです。 この麻酔は、薬物を脊髄の周囲の神経に注入することで、陣痛の痛みを軽減します。
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# 04
効果の確認
麻酔が効いてくると妊婦様への陣痛の痛みが軽減されます。 これにより、出産の過程がより快適になります。
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# 05
分娩の進行
無痛分娩の下で、通常の分娩の進行が続きます。 助産師や医師は出産を監視し、必要に応じて介入や支援を行います。
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# 06
出産
陣痛の進行や子宮口の開きに応じて出産が進行します。 無痛分娩下でも、妊婦様は分娩の進行を感じることができますが、痛みは軽減されています。
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# 07
麻酔の終了
出産後、麻酔の効果が消えるまで待つ必要があります。 その後、通常の感覚が戻り、妊婦様は赤ちゃんとのスキンシップを楽しむことができます。
無痛分娩をお考えの方は ファミール産院グループへ
無痛分娩に伴う注意事項
いくつかリスクがありますが、無痛分娩は適切な管理や処置を行うことで重大な事故を予防できます。
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局所麻酔薬中毒が起こる可能性
局所麻酔薬中毒(痙攣)により、意識消失・呼吸停止・脳神経麻痺・すべての反射消失・瞳孔散大などが起こる場合があります。しかし、医療スタッフがしっかりと全身状態を観察しながら麻酔を進めることで、仮に発生した場合も適切に対処することができます。
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後遺症の可能性
無痛分娩では、分娩が長時間化する傾向にあります。それにより、赤ちゃんの頭が長時間お母さんの神経を圧迫してしまい、分娩後に排尿障害や神経障害(足のしびれなど)のリスクが高まる可能性があります。分娩の長時間化を防ぐために
促進剤を使用したり、吸引や鉗子分娩を利用することがあります。